経理の仕事


■経理の仕事

これから経理を志す人や経理初心者、経理の仕事を長く続けたい方は、

経理部の役割とは、どのようなものであるのかを理解する必要があります。


一昔前と比較して、経理の仕事を取り巻く環境は激変しています。


昔の様に、月次・四半期決算・年次の決算の実務経験があったり、税務会計等

の税務の知識があるだけでは、企業が欲しい経理マンではありませんし、

その程度の人材は、掃いて捨てるほどいるのです。


ゆえに、これから経理を志す人や経理初心者、経理の仕事を長く続けたい方は、

経理の仕事の本質を理解する必要があるのです。


なお、経理の仕事において、何を勉強すればよいか分からない方は、

経理の勉強の仕方の頁を御覧ください。


ところで、経理の仕事は非常に多岐にわたりますが、経理の仕事をその目的

を基準として分類すると次の3つに分類できます。


経理の仕事

①会社の取引を数値化する仕事
②会社の資金を管理する仕事
③会社の現状把握や将来を計画する仕事


上記①の会社の取引を数値化する仕事とは、財務会計の分野であり、

会社の一取引毎に、仕訳伝票を作成し、帳簿に起票することです。


現在では、パソコンを利用し、必要な取引データを入力することで、

自動的に、仕訳伝票、会計帳簿、試算表、貸借対照表や損益計算書などの

財務諸表まで作成されてしまいます。


この①に関する経理の代表的な仕事には、月次決算がありますが、

月次決算を早期化するだけでは、不十分であることが理解できていない方は、

月次決算の早期化で業績向上は不可能ですの頁を御覧ください。


次に、上記②の会社の資金管理をする仕事とは、現金や預金の出納管理をし、

資金が不足する場合は、ファイナンスにより必要な資金を調達することで、

資金の管理には、資金繰り表の作成も含まれます。


最後に、上記③の会社の現状把握や将来を計画する仕事とは、

管理会計の分野です。


管理会計とは、経営判断をする為に、企業の会計データを企業独自の視点

で加工・分析し、企業のあるべき姿と現在の企業の姿のギャップを埋める為

の定量目標と定性目標で構成される財務計画の作成(総合予算)をすることです。


ところで、経理の仕事の中で、会社が求める会社の利益に貢献できる

経理の仕事とは、財務諸表を作成するだけの財務会計の仕事ではなく、

企業の意思決定に必要な管理会計の仕事です。


管理会計のプロフェッショナルのみが転職でも有利ですし、今後も企業社会

で必要とされる人材です。


ちなみに、会社の経営陣に、月次決算などのルーチン業務が主任務の

記録屋さんとしか評価されない経理の仕事を頑張るよりも、経営陣に助言

できる財務管理のスキルを身につけるべきです。


財務管理のスキルが身についているか気になる方は、

財務管理のスキル身についていますか?を御覧ください。


経理に必須のスキルを身につけたい方には、弊社が御提供している

経営管理マンツーマンセミナーがお勧めでございます。


■経理の仕事内容

次に、経理の仕事内容の主な具体例としては下記の通りです。


経理の仕事内容の主な具体例

※経済産業省の経理・財務サービススキルスタンダードより抜粋

■現預金管理
(入金処理、支払処理、残高管理)
■伝票処理
■売上債権管理
■仕入債務管理
■手形管理
■有価証券管理
■在庫管理
■固定資産管理
■ソフトウェア管理
■貸付金管理
■借入金管理
■社債管理
■デリバティブ取引管理
■外貨建取引管理
■経費管理
■原価計算
■月次決算
■年次決算
資金繰り表作成
■法人税申告業務
■連結納税申告業務
■法人住民税・法人事業税申告業務
■消費税申告業務
■源泉税申告業務
■住民税申告業務
■源泉徴収業務
■法定調書の作成
■償却資産税の申告業務
■税務調査対応
法定開示書類の作成
(決算短信有価証券報告書、会社法決算(計算書類事業報告書))
単年度経営計画作成
中期経営計画(中計)作成


以上が、経理の仕事内容の主な具体例となります。


経済産業省の経理・財務サービス・スキルスタンダードとは、経理の仕事等

のプロセスをフローチャートで示し、経理・財務業務の各業務に必要なスキル

を機能別・網羅的に整理したものです。


近年では、日本CFO協会が、経済産業省から経理・財務スキル検定プログラム

開発プロジェクトを受託して、経理・財務業務の実務スキルを客観的に測定

するFASS検定試験を実施しています。


なお、経理の代表的な仕事といえば月次決算業務がありますが、月次決算の

本当の目的が分からない方や本当の目的が理解できていないと思っている方は、

月次決算の目的を御覧ください。


ちなみに、経費の精算業務で困っている方は、経費精算業務は無駄の温床を

御覧ください。


■経理の仕事と資金繰り


企業に財務部が存在する場合は、資金繰りは、財務の仕事になりますが、

企業に財務部が存在しない場合は、資金繰りは、経理の仕事になります。


ところで、みなさんは、資金繰り表の作成方法を理解していますか?


経理に携わる大多数の人は、資金繰りの際に作成する資金繰り表の作成方法を

理解していません。


いうまでもなく、資金繰りを誤ると、最悪の場合、資金ショートを起こし、

会社が破綻する可能性もあります。


それくらい、資金繰り表の作成は、経理の仕事にとって重要な業務なのです。


そのような会社の命運を握る重要な業務にもかかわらず、正しい資金繰り表

の作成方法を身につけている経理の社員が少ないことは、経営者からすると、

ぞっとすることでしょう。


解説する迄もありませんが、資金繰りで重要なことは、運転資金の予測です。


しかし、企業で最も重要な営業活動によるキャッシュフローに影響する財務上

の運転資金を理解していなければ、運転資金の予測は不可能です。


要するに、財務上の運転資金の構造を理解していなければ、精度の高い

資金繰り表を作成することはできないのです。


また、資金繰り表を作成することは、総合予算を作成することと、

ほぼ同じことです。


ゆえに、資金繰り表の作成と予算の作成は、ほぼ同じことなので、

精度の高い資金繰り表を作成する為には、予算の作成スキルが不可欠なのです。


■経理の仕事と財務指標

会社で働いていると、自社や他社の財務内容を客観的に評価する為に、

様々な財務指標を計算することがあると思います。


そのような時に、自社の棚卸資産回転期間を算出する際は下記の計算式を

用いて計算しているでしょう。


・棚卸資産回転期間計算式・・・棚卸資産残高÷(売上原価÷365日)


しかし、皆さんは、上記の計算式の欠点と本当の棚卸資産回転期間の

意味を知っていますか?


財務指標は、ただ計算すればいいのではなく、その数値が示している意味

を正確に掴む為に、各財務指標の構造の理解をすることが重要です。


また、財務指標は、バラバラに計算するのではなく、各財務指標を活用する

順番も存在しています。


このような、各財務指標の構造を理解している人や、各財務指標を活用する

順番を知っている人は滅多にいませんし、高度な財務の専門書でも解説

されていることはほとんどありません。


しかし、各財務指標の構造を理解していなければ、企業のキャッシュフロー

を改善して、バランスシートを改善する仕事をすることは不可能です。


各財務指標の構造を理解することは、会社に貢献できる経理の仕事を

するうえでは基本中の基本といえます。


なお、財務分析のスキルが身についているか気になる方は、

財務分析の目的理解していますか?の頁を御覧ください。


■経理の仕事と銀行融資

企業は、自己資金だけでは事業を継続することができないので、

企業活動を継続する為に不足する資金を、銀行からの借り入れに

頼ることになります。


企業が銀行から借り入れをする際は、銀行に提出する資料を経理が準備

することが一般的です。


一般的に、下記の3年~5年間の中期経営計画(中計)を銀行に提出します。

①損益計算書(PL)
②バランスシート(貸借対照表・BS)
③キャッシュフロー計算書(資金繰り表)


銀行は、企業から提出された上記の数値計画を鵜呑みするほど馬鹿

ではありません。


しかし、そのことを知らない経営者は、経理が準備した資料が悪いので

融資が通らなかったと勘違いをする場合もあるでしょう。


そのようなケースに対応するためにも、経理は、銀行が融資を断る理由

知っておく必要があります。


■経理の仕事とリストラ

会社の業績が悪化すると、最初にリストラの対象になるのは事務系の社員です。


企業にとって重要な業務である経理の仕事も、リストラの対象からは

逃れることはできません。


経理の仕事でリストラの対象になる業務としては、何時でもアウトソーシング

が可能な業務である、伝票処理、支払業務、月次決算業務、年次決算業務

などの単純なルーチン業務です。


会社が思い切ったリストラをする時は、アウトソーシングが可能な業務

は全て外部に委託するケースもありますので、仮に、会社の経理部に社員が

数人のみである場合では、経理の責任者以外は、全て、リストラする企業

も珍しくはありません。


特に、中小企業に比べて、大企業の経理部の社員は担当業務が細かく

分けられていることが影響して、何年たっても経理業務の一部しか

実務経験がない人が大半です。


このような環境下では、何時まで経っても、経理業務の全体像を把握

することは難しいでしょう。


そのような大企業の経理部の社員が、急に、リストラになったとしても、

現在は、ルーチン業務しかできない人が年齢に関係なく有り余っていますので、

当然、転職も難しいでしょう。


しかし、ルーチン業務を担当している大半の経理社員は、何時でもリストラ

の対象となりうるのです。


社員の将来のことを考えてくれる企業は少数です。


現在は、いい年まで単純業務を担当させられた揚句、突然リストラ解雇される

世知辛い世の中です。


そのような状況に対応する為にも、会社に必要とされるスキルを身につける

必要があります。


■経理の仕事と分析

経理の仕事において分析の仕事といえば財務分析です。


しかし、大半の人は財務分析をどのようにすべきか理解できていません。


その一例として、自社の財務数値を各財務指標の計算式に当てはめて

算出した、財務指標の計算結果の意味を、経営陣から尋ねられても的確に

返答できないのです。


仮に、財務指標の計算結果の意味を返答できたとしても、流動比率で

あれば、120%だから良いとか、90%だから悪いというような、杓子定規な

説明しかできない人が大半です。


また、各財務指標を計算する順番も存在しますが、そのような各財務指標

を計算する順番も知らない人が多いのです。


更に、キャッシュフローの分析には欠かせない、運転資金と回転期間の関係

を理解できている人は、ほとんどいないのが現実なのです。


このような基本的な財務分析のスキルを身につけていなければ、経理の仕事

において分析業務をすることなど到底できません。


ゆえに、財務の専門書を読んで財務指標の計算式を暗記するだけでは、

経理の仕事における分析業務に対応することができないことを、しっかり

と認識するべきでしょう。


■経理の仕事と嫌われ役

経理の仕事に携わっている皆さん、皆さんの会社の中に嫌われ役はいますか?


企業における嫌われ役とは、たとえ、他の社員からは、口うるさいと

煙たがられても、会社の業績を向上させ、他の社員の生活を守るために、

言いにくいことであっても、会社の為にならない行為などを指摘し、

無理にでもやらせるために、口うるさく言う人のことです。


例えば、無駄話ばかりして、仕事をしていない人がいたら注意をしたり、

あるいは、もっと安く購入できるのに、高いお店で購入して経費を精算

しようとする人を注意したりします。


また、支払期日を過ぎたクライアントがいれば、そのクライアントの

担当営業マンに、早く回収するように注意したりすることもあるでしょう。


中小企業では、このようなことは社長が対応したり、経営陣が対応したり

する場合が多いようです。


しかし、社長や経営陣が、嫌われ役にならないといけない会社は、

だいたい業績が伸び悩んでいたり、業績が低迷しているのです。


経理が、社長や経営陣に、このようなことをさせているようでは、

会社の縁の下の力持ちとはいえません。


ゆえに、会社の金庫番でもある経理が、会社内の様々なことに対して

目を光らせ、企業における嫌われ役になることが、会社の為にもなりますし、

従業員全員の為にもなるのです。


このように、経理の仕事ができるようになりたい方は、経理のスキルアップ

だけに目を向けるのではなく、社長や経営陣から頼りにされる、会社の嫌われ役

になることも重要であると認識すべきでしょう。


■経理の仕事の基本

経理の仕事をする為には、経理の仕事の基本を知っておく必要がありますが、

経理の仕事に直結し経費の管理や原価計算の単位となるのが組織構成です。


組織構成には、事業部、部、室、課などがあり、企業では、それらの組織構成

には部門コードをつけて管理しています。


また、経理の仕事をする為には、社内外の様々なルールを知っておく必要

があり、経理の仕事をする際は、それらの決まりに従って業務を遂行する

ことになります。


社外のルールの代表例としては、商法、金融商品取引法、労働基準法、

独占禁止法、外為法、法人税法、財務諸表規則、企業会計原則などがあります。


社内のルールの代表例としては、定款、取締役会規程、就業規則、経理規定、

決済権限規定などがあり、会社の憲法といえる決まりが定款です。


経理の仕事をするうえでは、業務によって異なる権限や、誰がどのくらいの

決済ができるのかを把握しておかないと、経理処理が滞ってしまいますので、

経理担当者は、社内の決裁権限規定の変更に関しては、常に目を光らせておく

必要があるわけです。


また、決裁の方法には、会議による決定方法と書面による決定方法が

ありますが、会議による決定方法には、株主総会決議や取締役会決議があり、

書面による決定方法には、稟議書、決裁書、伝票などがあります。


そして、経理の仕事をするうえで最も重要であり経理業務のルールを

定めた規則が、経理規定ですが、経理規定では、経理業務に携わる者が、

どのように業務を遂行するべきかを明確にした規定であり、経理規定は、

経理業務の分担の明確化と経理業務の妥当性を判断する基準となるものです。


経理規定の内容としては、経理規定の目的、勘定科目の規定、帳簿の規定、

出納の規定、棚卸資産の規定、減価掲載の規定、固定資産管理の規定、

債権管理の規定、債務管理の規定、投資等の規定、決算業務の規定、

予算統制の規定、内部監査の規定などがあります。


経理規定以外のルールには、経理の仕事の手引書、経理の仕事業務フロー図、

経理の仕事マニュアルなどが企業では作成されています。


■経理の仕事と現金出納管理

経理の仕事は、お金の出し入れから始まるといっても過言てはありませんので、

現金出納管理は経理の仕事のいろはのいと言えます。


この現金出納管理を大別すると、①入金の管理、②出金の管理、③残高の管理

に分類することができ、現金出納管理における、入金・出金・残高の関係を

計算式で示すと次の通りです。


前日の現金残高+当日の入金金額合計-当日の出金金額=当日の現金残高


現金出納管理における入金とは、売上代金などを回収した現金については、

入金に含めることはなく、現金残高が少なくなってきた時に、銀行預金から

現金を引き出し補充した場合のことになります。


次に、現金出納管理における出金とは、会社の日常で発生する物品の購入や

経費の精算などになります。


一般的な企業では、経費の精算は一週間に一度決まった日に行っているので、

現金出納を通して支払をするものとしては、臨時的で、小額な支払にのみ

利用することになります。


現金出納管理における残高とは、毎営業日の決まった時間に、金庫の中に

保管している現金を数えて現金の金種毎に金種票に記載することです。


金種票を完成させた後に、現金出納帳の記帳を締め切り、実際の現金残高と

帳簿残高を照合して両方の残高が完全に一致していれば、その日の現金出納

管理事務が終了することになります。


なお、財務部が存在しない企業においては、ファームバンキングでの

振込処理等は、経理の仕事になります。


■経理の仕事と小切手

経理の仕事の代表的な日常業務には出納業務がありますが、出納業務において

小切手を使用する際や、受け取る際には小切手の取り扱いに関する知識は

欠かせません。


小切手には、記載漏れがあると小切手としての効力がなくなってしまいますので、

特に、小切手を受け取る際には、注意を要することになります。


その小切手の要件としては、

①小切手を示す文字が記載されていること
②金額
③振出日
④振出地
⑤振出人の氏名
⑥支払委託文句
⑦支払地
⑧支払人
⑨銀行印


上記の項目等がありますので、小切手を受け取る時には、これらの要件は

確実に確認する必要があります。


ちなみに、⑦支払地は、どの地域にある銀行が支払うのか記載する項目で、

⑧支払人には、銀行の名称が記載され、⑤振出人の氏名には、法人の場合は、

住所、会社名、代表取締役名などが記載され、④振出地には、小切手をどこで

振り出したのかを記載し、⑨銀行印には、銀行届出印を押印することになります。


また、小切手を支払で使用する際は、小切手帳の左側の部分の小切手の控え部分

に、振出日付、金額、渡先、摘要などを記載して、小切手の控えと小切手の境目

に銀行印で割印をします。


小切手を管理する際は、振り出した小切手がどれだけあるのかを確認すること、

未決済の小切手がどれだけあるのか把握すること、盗難に気をつけること、

線引小切手かどうかの確認、小切手の支払呈示期間である10日以内に、

銀行に取り立て依頼することなどが小切手管理のポイントになります。


■経理の仕事と手形

経理の仕事の代表的な日常業務には出納業務がありますが、出納業務において

手形を使用する際や、手形受け取る際には手形の取り扱いに関する知識は

欠かせません。


ちなみに、支払に使用する手形を支払手形と呼び、代金の回収の際に

受け取る手形を受取手形と呼びます。


手形には、記載漏れがあると手形としての効力がなくなってしまいますので、

特に、手形を受け取る際には、注意を要することになります。


その手形の要件としては、

①約束手形を示す文字が記載されていること
②金額
③振出日
④振出地
⑤振出人の氏名
⑥支払約束文句
⑦支払地
⑧支払人
⑨受取人
⑩銀行印
⑪手形券面金額に応じた収入印紙


上記の項目等がありますので、手形を受け取る時には、これらの要件は

確実に確認する必要があります。


ちなみに、⑦支払地は、どの地域にある銀行が支払うのか記載する項目で、

⑧支払人には、銀行の名称が記載され、⑤振出人の氏名には、法人の場合は、

住所、会社名、代表取締役名などが記載され、④振出地には、小切手をどこで

振り出したのかを記載し、⑩銀行印には、銀行届出印を押印する

ことになります。


また、手形を支払で使用する際は、手形手帳の左側の部分の手形の控え部分に、

振出日付、金額、渡先、摘要などを記載して、手形の控えと手形の境目に

銀行印で割印をします。


手形を管理する際に気をつけるポイントとしては、手形を記載する人と、

手形に銀行印を押す人は、必ず別の人が担当すること、振り出した支払期日

の管理をすること、印紙に消印をすること、受け取った手形が裏書手形の

場合は、裏書きが連続していること、手形の支払呈示期間である3日以内に、

銀行に取り立て依頼することなどが手形管理のポイントになります。


手形を発行する際には、手形に収入印紙をする必要がありますが、

手形に貼る収入印紙は、手形の券面金額によってかわりますので、

手形を発行する金額によっては、手形を複数枚に分割すると

収入印紙代の節約になります。


■経理の仕事と手形不渡り

経理の仕事の中で最も注意しなければならないこととして、自社が発行した

手形が資金不足で不渡りになってしまうことです。


一度不渡りを出してから、半年以内に二度目の不渡りを出してしまうと

銀行取引停止になってしまいますので、倒産となってしまいます。


しかし、現実的には、一度不渡りを出してしまうと、不渡りを出したという

情報が瞬く間に取引先等に知れ渡ってしまいますので、不渡りを一度でも

出してしまえば、事実上、会社が経営活動をしていくことができなくなります。


このような理由からも、資金繰りが会社の生命線であることを理解する

ことができます。


また、手形が不渡りになる一般的なケースとしては下記の通りです。

手形不渡りの理由

①0号不渡り
・形式不備・・・記載要件を欠いた手形
・裏書不備・・・裏書きが連続していない手形
・該当店舗なし・・・支払銀行名の記載を誤った手形

②1号不渡り
・資金不足・・・当座預金残高が不足し、手形金額を引き落とせない場合
・取引なし・・・手形を呈示した時に、当座預金取引がされていない場合

③2号不渡り
・偽造変造・・・手形が偽造や変造されてしまった場合
・詐取・・・手形が騙し取られた場合
・盗難紛失・・・手形が盗難や紛失してしまった場合
・印鑑相違・・・偽造や相違により手形に押印されている印鑑が銀行届出印
と異なる場合
・約定用紙相違・・・銀行所定の統一手形用紙を使用していない場合


■経理の仕事と固定資産管理

会社の組織に、経理部以外に総務部があれば、固定資産の管理は総務部に

なりますが、会社の組織に、総務部が存在しない場合は、固定資産の管理も

経理の仕事になります。


固定資産の代表的な管理方法には台帳管理があり、台帳管理では、

勘定科目毎に台帳を作成します。


各固定資産には、各固定資産に固有の管理番号を割り当て、固定資産台帳に

記載する項目としては、①資産の種類、②仕様、③資産購入日、④取得価額、

⑤耐用年数、⑥帳簿価額、⑦管理部署、⑧設置場所、等は最低網羅しておく

必要があります。


また、減価償却資産の対象としては、取得価額が10万以上のものですが、

この場合の10万円以上とは、消費税の金額を除いたところで判断すること

になります。


この固定資産は、保有しているだけで地方税が発生することになります。


建物と土地に対しては固定資産税、パソコン、自動車、機械などに対しては

償却資産税が課税され、パソコン、自動車、機械などの償却資産は、1月1日

現在に所有している償却資産の内訳を、各資産が設置されている市町村毎に

毎年1月末までに申告することになります。


最近は、固定資産については、購入せずにリースを利用するケースが

増えていますので、リース資産についても、固定資産と同様の管理が

必要となっています。


リース資産を管理する際も、台帳管理が一般的で、台帳には、

①リース資産の種類、②リース期間、③リース料、④リース資産使用部署、

⑤リース資産設置場所などは最低記載しておく必要があります。


このリース取引には、ファイナンスリース取引とオペレーティングリース取引

があります。


ファイナンスリース取引に該当する要件は、途中解約ができない契約

になっていることと、借り手がリース資産の費用を実質的に負担する

フルペイアウトの契約になっていることです。


ファイナンスリース取引に該当しない取引が、

オペレーティングリース取引です。


■経理の仕事と会計ソフト

現在の企業においては、ごく一部の企業を除いて大半の会社では、

会計ソフトを使用しパソコンで経理実務を行うことが一般的です。


このような理由から、現在の企業の経理現場では、簿記のテキストに

登場してくるような、一般的な帳簿を使用した会計処理の手順である、

伝票起票→元帳転記補助簿試算表貸借対照表・損益計算書までを

手作業で行うのではありません。


パソコンを使用した会計処理では、伝票を起票した後に伝票の内容を

会計ソフトを利用してパソコンに入力することで、上記の赤字の部分は

パソコンが自動処理することになります。


この会計ソフトを利用する際は、企業の実情に合わせた勘定科目の設定、

定期的なデータのバックアップ、会計データにアクセスできるアクセス制限

の設定をすることが必要になります。


また、会計ソフトを使用する際は、会計データの保存と会計データに関する

機密保持に注意する必要がありますが、これらの注意事項に下記の様な

項目があります。

会計データの保存と会計データに関する機密保持についての注意事項


・会計データの定期的バックアップとバックアップデータを異なる場所で保存する
・会計ソフトを使用する際のユーザーIDとパスワードを厳重に管理する
・情報漏洩を防ぐため会計ソフトのデータを勝手にコピーしたりすることを防ぐ
・ウイルスにに感染しないように、ネットの閲覧制限やメール管理にも気をつける
・会計データの閲覧は、経理部以外の者には閲覧を制限する


■経理の最も重要な仕事

企業の組織内に、経営企画室の部署が無ければ、経理の最も重要な仕事は、

経営計画を達成へ導くために経営管理をすることです。


この経営管理の仕事は、経営企画の仕事の中でも、難易度の高い業務に

なりますが、このような業務を遂行することができなければ、会社の利益に

貢献することはできません。


この単年度経営計画や中期経営計画を達成する為には、計画と実績のギャップ

をタイムリーに特定し、直ちにその課題に対する対策を実施する必要があります。


しかし、一般的な予算実績管理手法では、予算に対する課題を適時に把握

することは不可能です。


ゆえに、経理部が経営の見える化を進め、予算と実績のギャップの原因である

課題をタイムリーに把握出来る、経営の仕組みを構築する必要があります。


このような、経営管理(管理会計)に関わる業務を遂行できるようになってこそ、

会社の利益に貢献できることになります。


なお、経理の社員が、企業外部の利害関係者に情報提供することを目的とする、

財務会計や税務会計の専門知識だけを身につけることに一生懸命なようでは、

企業内で、評価が高まることはありません。


■経理の仕事の流れ

基本的な経理の仕事の流れとしては、何らかの取引の為の事務処理をして、

その後、それら取引の証憑を基に、仕訳伝票を作成することが、

基本的な経理の仕事の流れといえます。


また、企業規模の大小に関わらず、1日の経理の仕事の流れの中で、

その日の現預金残高を合わせることは基本であり、正確な経理業務をする為の

スタートラインといえます。


■経理の仕事と減損会計

最近の経理の仕事の中で、やっかいな仕事の1つに減損会計がありますが、

減損処理の要否の判定基準としては、時価の著しい下落と回復可能性の

2つの面からから判断することになり、非上場株式の減損処理の要否の

判定基準は下記の通りです。


非上場株式の回復可能性の判定基準

回復可能性ありと判定できる場合は、時価の下落が一時的であり、おおむね

期末後一年以内に時価が取得原価まで回復する見込があることを合理的な

根拠による予測できる場合です。


合理的な根拠には、翌期の経営計画に基づいた企業の業績見込みである

予算や財務計画も含まれますし、非上場株式の時価は、1株純資産(BPS)を

適用するのが一般的なので、予算貸借対照表(BS)の作成が必須なのは当然で、

予算キャッシュフロー計算書(CF)の作成もしていないと、企業の財務計画

とは認められないでしょう。


非上場株式の回復可能性なしの判定基準

回復可能性なしと判定できる場合は、時価が過去二年間に渡って大きく下落し、

債務超過になっている場合や二期連続で損失を計上し、翌期の経営計画に基づく

予算や財務計画においても損失が予想される場合です。


予算貸借対照表(BS)を作成して、1株純資産(BPS)が取得価格を回復

していたり、業績についても黒字転換をすることを示すことができれば、

回復可能性なしと判定されることはないでしょう。


これらの判定した結果、時価が取得原価より著しく下落し回復する見込みが

無いまたは不明と判定された非上場株式は減損処理をする必要があります。


このように、非上場株式に関する減損会計において、監査法人へ、合理的な

根拠となる資料を提出する為には、経営方針に基づいた財務計画が必要と

なってきますので、予算作成の仕事とは縁のない経理であっても、

予算の作成スキルが求められる場合があります。


■経理の仕事の年間スケジュール

経理の仕事は、毎年、決まった時期に必ずやるべき業務がありますが、

経理の仕事の年間スケジュールの中で、最も重要な業務といえるのが

会社の決算です。


この決算は、会社の年間の財務諸表を完成させることであり、全ての会社は、

事業年度終了後2ヶ月以内に財務諸表等を完成させて、税務署に、決算書や

法人税等の申告書を提出しなければなりません。


また、その他の経理の仕事の年間スケジュールの中で必ずやるべき業務

としては、毎年1月末までに提出する必要がある、法定調書、給与支払報告書、

償却資産税の申告作成業務があります。


その他では、会社が給与や配当などを支払うことにより天引きした源泉所得税

や住民税特別徴収分を、原則、翌月の10日までに納付する業務があります。


■経理の仕事に必要な資格や知識

経理の仕事に必ず必要な資格や知識としては、簿記の資格や知識がありますが、

簿記とは、企業等の活動を記録・計算・整理する技術です。


簿記は活動結果であるフロー(経営成績)とストック(財政状態)を明らかにする

ツールであり、一般的に簿記という場合は、複式簿記を指しています。


また、経理の仕事に関連する資格としては、税理士や公認会計士などの資格

がありますが、本来の、企業が求める経理の役割を果たす為だけであれば、

経理の仕事に就くには日商簿記3級程度の資格があれば充分であるといえます。


要するに、一見難しそうに見える経理の仕事も、初歩的な知識さえあれば

対応できるので、未経験の転職も可能なのです。


そして、経理の仕事に就くには、会社の財務上の問題点を把握する為の

財務分析スキルと、資金繰りにも必要な、理想のBS・PL・CFを作成する為の

予算作成スキルは必須のスキルです。


■経理の仕事の実情

経理の仕事の実情としては、大企業と中小企業では、同じ経理の仕事でも、

担当する業務の幅が全く異なります。


また、大企業は、経理部に所属する社員が多いので、担当業務も、

相当に細分化されているのが実情ですので、そのような経理の仕事の枝葉

に当たる業務を何年間担当しても、大幅なスキルアップを図ることができ

ないのは明らかです。


そして、中小企業の経理部は少人数である為に、担当する業務も相当に

幅広いのが一般的です。


中小企業の経理部で働く人は、経理業務全般に携ったことがある人が多い為、

経理の実務年数が短くても、経理業務全般に対応できるスキルが身について

いる人が多く、スキルアップの観点からは、中小企業の経理部で働くことが、

経理の仕事を覚える近道といえるのが実情です。


ちなみに、本当の意味で、簿記がわからない経理は大勢います。


■経理の仕事のやりがい

経理は、企業や経営陣にとって経営参謀であり、企業の現状を客観的な数値

に変換してタイムリーに社長に報告する機能もある部署なので、企業の要の

部署といえます。


そのような企業業績に直接貢献できる経理部の役割を果たせる利益貢献度

の高い業務をすることが経理の仕事のやりがいといえます。


例えば、企業のあるべき姿である、単年度経営計画や中長期経営計画を

作成することで、企業の問題が顕在化しますし、財務諸表を分析して、

どこに問題があるかを把握できれば、企業の弱みを改善することもできます。


このように、経理の仕事のやりがいとは、企業業績に貢献できる仕事が

どれだけできるかで、やりがいを感じることができるようになるものなのです。


ゆえに、経理の仕事が、単なる財務諸表を作成するだけの単調な仕事という

認識があるようでは、何時までたっても、経理の仕事のやりがいを

感じることはないでしょう。


■経理の仕事を取り巻く環境

経理の仕事を取り巻く環境は、年々厳しさを増しています。


以前のように、会社にパソコンが存在しない時代は、経理は専門職の代表的な

仕事でした。


しかし、現在では、高度に進化したパソコンやソフトの影響で、一般的な、

簿記や会計を知っている程度のスキルでは、一般事務程度の給与待遇でしか

評価しない企業すらあります。


これからは、更に、経理業務の効率化・合理化が進み、機械的なルーチン業務

しかできない経理社員が、職を失う時代になりますので、経理の社員は、

これからの厳しい時代に備えて、企業で評価される、実務のスキルアップを

図るべきです。


■経理の転職と経理の仕事

最近では、経理の転職でも、人材紹介会社を経由した転職が増えていますが、

以前は、経理が転職をする際に、公認会計士や税理士の資格を保有していると、

経理の転職成功は約束されていた様な時期もありましたが、現在の経理の転職

では、それらの資格の威力はほとんどありません。


この理由としては、経理の仕事においては、ペーパー知識の資格保有者よりも、

実務遂行能力がある人材が求めらていることが主な理由です。


尚、少数ながら、ヘッドハンティングでの経理の転職のケースもありますが、

経理において、ヘッドハンティングをされるような人材は、

CFO(最高財務責任者)の役割を果たせるようなCFOクラスの人材に限られて

いるのが実情です。


■経理の仕事と会計事務所の仕事

経理の仕事と会計事務所の仕事は重複する部分もかなりあるので、

会計事務所の仕事を経験してから、一般事業会社の経理の仕事をする人

も多くなっています。


最近は、会計事務所の業界も、ご多分に漏れず、激しい低価格競争に苦しん

でおり、会計事務所の経営も苦しさを増しています。


この会計事務所業界における低価格競争は、一過性のものではなく、

他の業界と同様に低価格化が極限まで行ってしまうことは間違いありません。


あらゆる業界で、低価格は進行し、10年前や20年前では考えられないような

低価格の商品やサービスが世の中には溢れています。


その原因の1つが、中国をはじめとした新興国の台頭で、会計事務所業界

においても、大手の会計事務所が、記帳代行業務に必要な入力業務を、

中国などの人件費の安い国にアウトソーシングすることで驚異的な低価格

を実現しています。


この会計事務所業界で起こっていることは、経理の仕事に携わる人にとっても、

他人事ではなく、明日は我が身ということです。


経理の仕事である、仕訳を伴う伝票処理や伝票のパソコンへの入力業務は、

言うに及ばず、月次決算や年次決算ですら低価格でアウトソーシングが可能

となっているのです。


会計事務所業界は、激しい低価格競争に陥っており、現在の会計事務所業界

の姿は、将来の経理の仕事に携わっている人達の姿を暗示しているともいえます。


資格神話の崩壊した現在では、経理の仕事に携わる人は、会社が求めている

スキルを身につける必要性に迫られているといえるでしょう。